子どもが学校に行けなくなったとき、多くのご家庭が感じるのは、「このままで大丈夫なのだろうか」という不安です。学校に戻すべきか、別の道を考えるべきか、先のことを考えると落ち着かなくなる。そんな中で、フリースクールという選択肢に出会う方も少なくありません。
ただ、そのときに一度だけ考えてみてほしい問いがあります。
「フリースクールに通わせたい目的は、なんだろう?」
同じ“フリースクール”でも、通われる家庭の目的は同じとは限りません。目的が違えば、「どんな通い方が向いているか」「何を成果と考えるか」も違ってきます。ここでは、実際によく見られる“目的のタイプ”を、できるだけ分かりやすく整理してみます。
まず、「安心を取り戻すこと」が一番の目的になっているケースです。
家庭内で大きく荒れないで過ごせること。子どもが一人きりで閉じこもらないこと。誰かとつながっている安心感があること。この段階では、「毎日通わせたい」「生活を立て直したい」よりも、「これ以上崩れないこと」「家庭が落ち着くこと」の方が大切なゴールになることがあります。
これは決して消極的な選択ではありません。親御さんの心に余裕が戻ること。子どもが完全に孤立しないこと。それだけでも、大きな意味があります。
次に、「選択肢を失わないこと」を一番に考えるケースです。
今すぐ学校復帰は難しそう。でも、完全に学校から離れてしまうのは怖い。進学や将来を考えると、「道をつないでおきたい」。このように、“戻れる可能性を残したい”という考え方からフリースクールを選ぶご家庭も多くあります。
「すぐに元通り」にするのではなく、「戻れなくもない場所に、子どもを留めておく」。これはとても現実的で、よくあるニーズです。
「居場所の確保」を最優先にするケースもあります。
勉強よりも先に、「人の中にいられる」こと。「家以外の場所にいられる」こと。「安心していられる場がひとつある」こと。社会から完全に切れてしまわないよう、細い糸を保つためにフリースクールを選ぶ。これも、とても大切な目的です。
孤立しないことは、それだけで子どもにとって大きな価値があります。
一方で、「学習面の遅れをゼロにしない」ことを目的とするご家庭もあります。
学校に戻れるかどうかはまだ分からない。でも、完全に学習が止まってしまうのは怖い。進路を考えたとき、「全く手を付けていない状態」にならないようにしたい。そんな現実的な理由で、学習サポートを求めて来られる方もいます。
この場合、「毎日通える身体や生活リズムを作りたい」というところまでは望んでいないこともありますが、それでも“学びの火を消さない”という意味は、とても大きいです。
そして、フリースクール側が大切にしている目的もあります。
それが、「社会参加の力を少しずつ取り戻していくこと」です。
ここで言う「社会参加の力」とは、立派な目標や強い意志の話ではありません。もっと手触りのある、具体的な力です。
例えば、生活リズムが極端に崩れないこと。
朝が完全に昼夜逆転のまま固定されないこと。
何もせず一日が終わる日が、ずっと続かないこと。
これは根性の問題ではなく、「毎日を支える基礎体力」のようなものです。
外に出る流れを維持できること。
週に何度かでも外出できること。
気持ちの波はあっても、ゼロに戻らないこと。
「完全に止まらない」というだけでも、大きな意味があります。
約束を現実にできること。
決めた時間に、ある程度合わせて動けること。
当日キャンセルが“当たり前”にならないこと。
「行けなかった」で終わらせず、「なぜ難しかったか」を言葉にできること。
これは責任感というより、「生活にスケジュールを持てる筋力」です。
人のいる空間で過ごせること。
一人ではない空間にいても、消耗しすぎて動けなくならないこと。
強い緊張があっても、いつも限界にはならないこと。
まずは「そこにいられる」ことが、とても大事です。
短いやり取りで意思疎通ができること。
短い指示なら受け止めて動けること。
嫌なことや難しいことを、遮断ではなく“言葉で拒否できる”こと。
これは「周りに合わせる力」ではなく、「人との距離をうまく調整する力」です。
こうした力が少しずつそろってくると、
学校に毎日通う
通信制高校で通学日をこなす
アルバイトを続ける
進学して通学する
こういった“現実的な社会参加”が、初めて現実味を持ち始めます。
だからフリースクールとしては、
「最終的には、平日のどこかに“毎日通える状態”を目指せたら理想です」
というゴールを大切にしています。
ただし、全てのご家庭が最初からそこを目指しているわけではありませんし、それを押し付けることが正しいとも思っていません。
大切なのは、「最初に目的を言葉にしておくこと」です。
何を守りたいのか。
どこまでを目指したいのか。
いまは何を望んでいないのか。
これがはっきりすると、
「いま優先すべきことは何か」
「どんな通い方が合っているのか」
が、とても見えやすくなります。
フリースクールは、「頑張らせる場所」でも「学校の代わり」でもありません。
その子とご家庭にとって、いま必要な役割を静かに担う場所です。
もし相談に来ていただけるなら、
「私たちはまずここを守りたいと思っています」
と、少しだけ本音を教えてください。
そこから、一緒に現実的な道筋を考えていけたらと思っています。





