模試の成績表を見て、「次はもう少し取れると思う」と本人が言う。親も「まだ春だし、次の模試を見てからでいいか」と返す。こうしたやり取りは珍しくありません。ですが、高校受験で春にいちばん起こりやすい先送りは、ここから始まります。
この判断が危ないのは、模試で落とした単元は自然には埋まらないからです。英語の長文、数学の関数、理科の計算。こうした弱いところがあっても、学校の授業は止まらず先へ進みます。家では定期テストの提出物もあるので、模試でできなかったところは気になっていても後回しになりやすい。これは本人の性格の問題ではありません。毎日の勉強が、どうしても目の前の課題で埋まりやすいからです。
しかも春は少しやっかいです。少し勉強すると、本人は前よりできる気になります。親も前向きな言葉を聞くと少し安心します。ですが、安心できることと、実際に点が上がることは別です。高校受験で間に合うかどうかは、本人がその気になっているかでは決まりません。前に落としたところを、学校の進度が重くなる前に戻せるかどうかで決まります。
このまま様子見をすると、四月の実力テスト、五月の定期テスト、六月の三者面談で困りやすくなります。四月で点が戻らない。五月は学校ワークに追われる。六月の面談でも「もう少し様子を見ましょう」となり、はっきりしないまま時間が過ぎる。そうして夏前になってから、「思ったより足りない」と気づくことになります。春に動かなかった分だけ、夏の立て直しは重くなります。
では、何を変えればいいのか。やることは一つです。次の模試を待たずに、今週中に「先に立て直す場所」を決めることです。全部を一度にやろうとすると崩れます。数学なら計算なのか関数なのか。英語なら単語なのか長文なのか。理科なら用語なのか計算なのか。そこを絞るだけで、春の一か月の使い方はかなり変わります。
塾で学習を組み立てるときに必要なのは、気合いではありません。今の点数と答案なら、どこから直すと点に戻りやすいのか。四月から六月で何を優先するのか。家で毎日やることを何に絞るのか。そこを決めることです。逆に、家でやらない方がいいこともはっきりします。あれもこれも増やすこと。模試のたびに期待だけを更新すること。高校受験が間に合うかどうかは、春に前向きな話ができるかでは決まりません。春のうちに、先に直す場所を決められるかどうかで決まります。

