記述問題への向き合いかたについて

「今日、学校どうだった?」では答えにくい
「今日、学校どうだった?」と聞いても、「普通」「別に」「忘れた」で終わってしまうことがあります。保護者としては、「話したくないのかな」「何も考えていないのかな」と感じるかもしれません。
しかし、答えられないのは、考えていないからとは限りません。「今日どうだった?」という質問が広すぎて、何から話せばよいのか分からないことがあります。
一日の中には授業・休み時間・友達との会話・給食・部活など、たくさんの出来事があります。その中から一つを思い出し、話す内容を選び、順番に並べ、言葉にする。短い質問に答えるだけでも、実は四つの作業を一度に求められています。
記述問題でも、同じところで止まる
記述問題で手が止まる子にも、よく似たことが起きています。
「明治維新について説明しなさい」と聞かれると、習った言葉を覚えていても、何を使い、どこから書き、どの順番で並べればよいのか迷います。
塾でも、記述を空欄にしている生徒に私はまず「使えそうな言葉を一つ挙げて」と聞きます。すると、「廃藩置県」「四民平等」「文明開化」など、知っている言葉が出てくることがあります。
そこで、「それはどういうこと?」「何が変わった?」「なぜ大事だった?」と一つずつ聞くと、少しずつ答えの材料がそろっていきます。
記述問題で必要なのは知識だけではありません。知っていることの中から、問いに合う内容を選び、つなげて説明する力も必要です。「分からない」のではなく、「答えの作り始めが分からない」場合も少なくありません。
まずは、言葉を一つだけ出す
家庭での会話でも、最初から長い説明を求める必要はありません。次の三段階で十分です。
一つ目は、言葉を一つ出すことです。
「今日、授業で新しく習った言葉はある?」
「先生が何度も言っていた言葉は?」
「今日いちばん難しかった問題は?」
二つ目は、その意味を聞くことです。
「それは、どういう意味?」
「どんな問題だった?」
「どこまでは分かった?」
三つ目は、理由やつながりを足すことです。
「どうしてそうなるの?」
「前に習ったこととつながっている?」
「自分ではどう考えた?」
一語を出し、意味を説明し、理由を足す。この順番なら、いきなり長い話を求められるよりも答えやすくなります。
正解より、言葉にしたことを認める
説明が途中で止まったり言葉が足りなかったりしても、すぐに正解へ直す必要はありません。まずは知っていることを自分の言葉にしてみたことを認めましょう。
「よく覚えていたね」
「そこまで自分で説明できたね」
「その言葉が出てきたのは大きいね」
正しさだけを見られると、子どもは間違いを恐れて話さなくなることがあります。多少不完全でも、まず言葉にしてみる。その経験を重ねた方が、次の説明につながりやすくなります。
書く前に、話す練習を
記述問題が苦手な子にいきなり長い文章を書かせても手が止まります。先に「言葉を一つ出す」「意味を説明する」「理由や結果を足していく」と、話しながら答えの材料を作った方が取り組みやすくなります。
家庭で毎日作文を書かせる必要はありません。「今日どうだった?」で終わらせず、「何を覚えている?」と一つに絞って聞いてみる。出てきた言葉の意味を聞き、理由を一つ足す。
その短いやり取りが、知っていることを選び、順番に並べ、文章にする練習になります。記述問題の力は、机に向かっている時間だけでなく、日々の会話の中でも育てられます。
家庭学習でも、同じように止まる
家庭学習でも、「勉強しなさい」だけでは動けない子がいます。立ち上がる、机に座る、教材を開く、今日やるページを決める――取りかかるまでにも、いくつもの手順があるからです。「まず教材を開こう」「最初の一問だけやろう」と入口を狭くすると、動き始めやすくなります。

