「自分で考え始める」も、大切な成長

解き方を教える前に、確かめたいこと
問題を説明すると、うなずいてくれる。似た問題もその場では解ける。ところが翌週になると、また手が止まってしまう。勉強を教えていると、こうした場面に出会います。
もう一度説明することも、練習を増やすことも必要でしょう。ただ、その前に確かめたいことがあります。前回はどこまで自分で考えていたのだろうか、と。
こちらが手順を一つずつ示せば、答えまでたどり着けることはあります。「まずこの数字を使って」「次はここを計算して」。けれど、それだけでは最初の一歩を自分で選ぶ経験が抜けてしまうことがあります。
何を見て、何から考え始めるか。解き方を覚える前のところから、一緒に取り組む必要がある子もいます。
例えば割合の問題なら、公式を忘れたとは限りません。問題文に出てくる数字が何を表すのか、分かっていないのかもしれません。「全部でいくつ?」「そのうち、いくつ?」と確かめる。簡単な数に置き換える。絵に描いてみる。公式の練習を始めるより前に、時間をかけたいところがあります。
学年にとらわれず、必要なところまで戻る
こうしたときは、ウチではすぐさま今の学年の問題から離れます。分数で止まるなら分数へ。割り算の意味を確かめた方がよければ、そこまで戻ります。中学生だから中学校の内容だけ、と範囲を決める必要はないと考えています。
前の学年に戻ることに抵抗を感じる子もいるでしょう。だからこそ「今の問題を解くために、ここを確かめよう」と目的を伝えたい。戻って終わりではなく、そこで分かったことを使って元の問題に取り組みます。
教材や問題の見せ方も見直します。詳しい説明が助けになる子もいれば、情報が多くて読む場所に迷う子もいます。何問も並んでいると動けなくても、一問だけなら取りかかれるかもしれません。予定どおりに進まないときには、本人の頑張りだけでなく、こちらが用意したものも確かめます。
答えを急がず、考え始めるのを待つ
本人が考え始めたら、答えを急がず待つ。これが案外難しいところです。大人には次の手順が見えています。黙っている時間が続くと、つい説明を足したくなります。
でも、その間に頭の中で数字を動かしたり、言葉を探したりしているかもしれません。こちらが先に言ってしまえば、本人が何を考えていたのか分からないまま問題が終わってしまいます。
もちろん、困ったまま座っている時間を長くしたいわけではありません。何をすればよいか分からないなら、考えるきっかけを渡す。少し動き始めたら、また待つ。
どこまで手を貸すかは、その都度変わります。前回できたから今回も任せられるとは限りません。説明することと同じくらい、今どこで止まっているのかを見ることが必要だと感じています。
正解に届く前にも、変化はある
こちらを見て答えを待っていた子が、問題文に線を引く。数字を一つ書いてみる。「これかな」と計算を始める。まずはこういった「手が動く瞬間」を、多く作りたい。
途中で間違っていても、自分で選んだ一歩があれば、そこから話ができます。「どうしてこの数を使ったの?」と聞くことで、考えていたことが少し見えてきます。直す場所も一緒に確かめやすくなります。
こうした変化は、テストの点数にはすぐ表れないこともあります。自分で考え始めても計算を間違える。今日はできても次回は助けが必要になる。それでも、毎回最初から手順を教わっていた頃とは、取り組み方が変わり始めているかもしれません。
そこを確かめながら練習を重ね、解ける問題を増やしていきます。
「前は最初に何をするか一緒に考えたね。今日は自分で始められたね」。できるようになったことは、具体的に伝えたいと思っています。本人にとっては小さすぎて、気づいていない変化かもしれないからです。
子どもの変化に合わせて、教える側も変わる
私たち自身も「この子にはこの教え方」と決めて終わるわけにはいきません。前は必要だった説明が、今は考える邪魔になることもあるでしょう。反対に、任せてよいと思っていたところに抜けが見つかることもあります。
子どもに変化を求めるなら、こちらも関わり方を変えていく必要があると思います。
目の前の一問を解き終えること。その経験を次の一問に生かせること。両方を考えながら、説明したり待ったり、ときには前の学年に戻ったりします。
すぐには点数に表れない変化も見つけながら、自分で解ける問題を増やしていく。そのための時間を大切にしたいと考えています。

